2022年度 修士論文発表会

2023年2月7日、修士論文発表会が開催されました。
卒業論文から引き続き2年間、学会発表や国際会議など各人様々な取り組みを経て自身の研究について深めてきましたが、集大成として十分に成果を伝えられたと思います。

僕は、「こども」の作る建築を対象とする少し変わった研究をしていました。意図としては、既成概念にとらわれない「こども」を通して、原初の空間の成り立ちを考察しようというものです。こどもたちは当然のように、家でバンジージャンプをしますし、床には芝生をはります。昇降手段がボルダリングの家もあれば、手動のエレベータの家もあります。このように1人1人の作品はすごく個性的にも関わらず、どこかしら共通点があり、それを見つけることが難しくも面白かったです。(荻)

片岡

手錢家における保存過程・手法について研究しました。どのような視点で、どのような手法を選択したのかを分析していくことは難しかったですが、同時に興味深くもありました。手法の選択理由については、もう少し深掘りできたらと感じました。手錢家や手錢美術館の方々をはじめ、調査を行なった美術館関係者、そして研究室のメンバーといった多くの方々の協力により研究を進めることができました。深く感謝申し上げます。学部から数えて3年間、関心ある事柄について集中して研究できた時間はとても充実したものでした。(片岡)

古澤

卒業論文に引き続き、ル・コルビュジエの住宅研究を行いました。初め研究の進め方すらわからなかった学部生時代からは少し成長し、導きたい仮説に向けて分析を進めていく、研究のイロハについて少しだけ理解できたような気がします。ル・コルビュエの建築理論は非常に複雑で苦労もしましたが、フランスに赴き現地に立つル・コルビュジエ建築を見たり、本を通して思想に触れたりする中で、建築の奥深さとル・コルビュジエの思考の深さ、そして何よりも歴史を作り上げてきた人物の熱量を肌で感じ取ることができ、濃密な2年間を過ごせました。(古澤)

水田

 下記の引用文は、レム・コールハースの著書『錯乱のニューヨーク』において用いられていた一文です。どこか掴みどころのない鬼才コールハースの思考法の片鱗が垣間見えたようで印象的でした。

「その知性が第一級かどうかを判定する基準は、相反するふたつのことを同時に思考して、なおかつまともに働くかどうかということである。」——F・スコット・フィッツジェラルド『崩壊』

 コールハースの観察眼によって見出された「ヴォイド」の概念とは、〈空虚でありながら空虚ではない〉という矛盾を抱えた存在です。そしてこのような矛盾は、ありとあらゆるものごと——例えばわたしたちの内側——に存在しているような気がします。建築という枠組みを超えて、様々なことについて考えることのできた2年間でした。ご教授くださった千代先生に心より感謝申しあげます。ありがとうございました。(水田)

千代研究室 修士論文発表メンバー