令和五年度 インテリアデザイン ガイダンス・建築見学
10月6日、学部3年の設計授業「インテリアデザイン」のガイダンスおよび建築見学が行われました。
今年度は前田圭介先生に島根にお越しいただき、研究室のメンバーと共に松江の建築を巡りました。ガイダンスに参加したメンバーにとって、近場にあるにもかかわらず普段はあまり立ち入らない場所へ向かう良い機会になったと思います。
田部美術館
はじめに、学芸員の方から田部美術館について説明をしていただきました。電球の取り換えのために足場を組まなければいけないことや収蔵庫が来館者の動線と重なること、床のタイルが展示替えの際に不便であることなど、職員という立場からの貴重なお話を聞くことができました。
建物全体は外観と内部で大きく印象が異なることが特徴であるように感じました。外観は菅谷たたら山内にある高殿を想像させる入母屋の大屋根によってどっしりとした重い印象を受けます。一方で、内部空間は自然光の反射によってふんわりとした明るさがあり、軽やかさが感じられました。
明々庵
不昧公の好みによって建てられた茶室で、東京などへの移築を繰り返し、田部家の手によって松江に戻ってきています。出雲流庭園の露地の石は高く打たれ、踏んだ感覚も不安定でした。茅葺屋根によって、田舎的な雰囲気がより強く出ています。不昧公が20代のころに建てた茶室であり、若いながらに当時の茶文化に対して思うところがあったことや、茶室建設当時は武家屋敷などが立ち並ぶ都市の中に位置していたこともあり、現在とは場所的な意味合いも異なるというお話を千代先生からしていただきました。設計者の年齢や時代背景を踏まえて見学することで、不昧がこの茶室で何をしたかったのかが見えてくると思います。筆者自身も「お茶を飲む」という行為にどのような意味を見出せるのか考えていきたいです。
松江歴史館
館内にある伝利休茶室を見学しました。この茶室は三畳台目ですが、二畳台目の明々庵と比較すると非常に広く感じられます。前田先生、千代先生から設計者によって変化する寸法感覚のお話もありました。明々庵、伝利休茶室を見学することで、同じ考えによる設計でも個人の身体感覚によって茶室内の雰囲気が大きく違ったものになるのだろうと思いました。
ガイダンス
松江歴史館内の喫茶きはるで、千代先生との対談形式で前田先生から見学した建築の感想をいただきました。これからの時代に生き残っていける建築とはどのようなものなのか、解体可能であることの日本建築らしさ、便利であればあるほど人間としての感覚が失われているのではないか、など利用されることで成り立つ美術館や移築を繰り返した茶室を見学した後ならではのお話をお聞きすることができました。
今回の課題は「私の家にある小さなお茶空間」です。歴史的な建築物を見るにはその建物が建てられた時の時代背景をとらえることが重要であり、どこが革新的・前衛的だったのかをとらえる必要があるというお話をしていただきました。本課題を通してお茶文化が時代によってどのような意味を持っていたのか、またそのためにどのような空間が求められたのかを考え、現代やこれからの社会において求められるお茶空間・住空間はどのようなものかを提案できることを目標とし設計に取り組みます。
ガイダンス・建築見学終了後には、有志で島根県立図書館に向かいました。松江城を見ながらの読書はとても贅沢です!
この度はご遠方、多忙のなか松江まで足を運んでいただきました前田先生、本当にありがとうございました。最終講評会に向けて3年一同精一杯取り組みます。
令和5年度 「インテリアデザイン」 3年 庄野那奈