令和7年度 まちづくり演習 大三島訪問

2025年9月27日〜28日、学部3年生の集中講義「まちづくり演習」の一環として、千代研究室のメンバーで瀬戸内海に浮かぶ愛媛県・大三島を訪問しました。「大三島 みんなのワイナリー」にて栽培から醸造・販売までを手がけておられる川田さんご夫妻にお世話になり、ワイン造りに関わる多様な体験をさせていただきました。

ぶどう収穫

ぶどう収穫

両日の午前中にはぶどうの収穫・仕分けを行い、「キャンベル・アーリー」という品種をお手伝いしました。

同じ畑であっても位置の違いによって果実の特徴が異なることや1年を通しての気候によって味の特徴が変化することを知り、ぶどう栽培の奥深さを実感しました。今回は海に近い畑での収穫であり、海風や潮の香りを感じながら作業できたことが印象的でした。

今回の作業を通じて、大三島特有の温暖な風土と豊かな自然環境を五感で感じることができまた、スタッフやボランティアの方々との交流は、地域固有の魅力と、ワイン醸造に携わる方々の真摯な想いに触れる貴重な機会となりました。

施設見学・中間発表

1日目の収穫作業後、ワイナリーの醸造所と「みんなの家」(販売所兼事務所)を見学させていただきました。

醸造所 コルク栓の機能説明中

「みんなのワイナリー」では設備のことから、ワイン造りと建物の関係、そして難しさやこれからの話まで、幅広いテーマでたくさんお話を伺いました!

特に、川田佑輔さんの語り口からは、島の気候・風土、そして地域社会に真摯に向き合い、「この島でワインを育む」という信念が強く伝わってきました。みかんやいちごを使ったスパークリングワインの開発など、飽くなき探求心と挑戦を重ねる情熱が印象的でした。

                                                    

「大三島みんなの家」改修案発表中

「みんなの家」では川田祥子さんから「みんなの家」とワイン販売についてのお話をお聞きしました。また「みんなの家」の老朽化などによりリニューアルを考えられているそうで、今年度はまちづくり演習の一環で「みんなの家」の改修案について中間発表をさせていただきました。参道から中庭に視線を貫かせる案や、吹き抜けを用いて1階から2階の販売スペースを見せる案、廃材やワイングラスを用いたインテリアなど好評を頂きました!

その後、「みんなの家」の正面に広がる大山祇神社参道を散策しました。

空き家も目立ちましたが休日に訪れたこともあり多くの観光客の方々が見られ、少しずつ大三島古来の参道の活気が戻りつつあるように感じました。

建築見学

2日間を通して大三島島内および今治市内の建築を見学しました。

今治市伊東豊雄建築ミュージアム
シルバーハット邸

1日目には島内で「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」と併設する「シルバーハット」を訪れました。
「伊東豊雄建築ミュージアム」は、鋼板の多面体がガツンと組み合わさったような、インパクトのある外観が特徴的です。建物の中も、光の取り入れ方や空間の切り取り方がユニークで、歩を進めるたびに全く違う雰囲気を味わえます。寝そべったり覗き込んだり、まるで遊具のように身体全体で建築を楽しめる仕掛けが凝らされていました。 

一方、移築・再建された「シルバーハット」は、ヴォールト屋根を繊細なフレームで支えることで、海辺のテントのような浮遊感を生み出しています。現在は、その軽やかな空間が展示やワークショップの場として活用されているそうです。

2日目には千代先生も合流し今治市内で建築見学を行いました!

今治市庁舎群の説明中

今治市では、丹下健三氏による「市民広場」の構想に触れました。丹下氏は2つの建築をL型に配置し、広場を地域に開放することを目指していました。現在その空間は駐車場として利用されていますが、磯崎氏が今治市民会館をコ型に配置することで3つの建物は調和し、港からの軸と駅からの軸を受け止めるアイストップとして機能しており、今治の港付近の旧市街地と駅周辺に広がる新市街地を結ぶ建築であるように感じました。

今治市公会堂内部

休館日に特別に見学させていただいた「今治市公会堂」は、細部へのこだわりが深く印象に残りました。

まず驚いたのは、冷たいコンクリート打放しの壁に木目が転写され、温かみが加わっている点です。また、外壁の凹凸が内部空間にも反映され、空間に一体感とリズムを生み出していました。

さらに、ドアノブや家具など、人が触れる部分には温かい木材仕上げが施されており、緻密な設計の中に使う人への配慮を感じました。建物の隅々にまで確かな意図と美意識が貫かれていることを実感する、貴重な体験でした。

今治市都市計画の説明中

さらに今治市民館では、丹下健三氏の展覧会が開催されており、展示模型を通して今治市の都市計画の思想や木造模型の芸術性を学びました。

今回の展覧会では模型や資料によって未来に建築家の考えや思いなどのメッセージを残していく重要性を改めて感じました。

                                            

その後、市庁舎からみなと交流センター「はーばりー」までの町並みを実際に散策し、地域に対する建築の在り方を体感しました。

みなと交流センター「はーばりー」

特に「はーばりー」では、周辺環境との調和や内部空間における利便性・快適性の重要さを学ぶことができました。

また道中の商店街では、地域に根ざした商業空間の魅力に触れるとともに、人口減少や空き店舗の増加といった地方商店街が抱える課題についてもご教授いただき、都市や建築が地域社会に果たす役割を深く考える契機となりました。

おわりに

今回のまちづくり演習を振り返って、人と交流し、自然や建物を実際に見て触れることで学ぶ貴重な機会となったと感じました。大三島ではワイン製造を通して地方創生を目指して活動されている方々、今治市では現地に暮らす人々のリアルな声を伺うことができ、それは「これからどのような建築が求められるのか」という問いへとつながっていきました。また、千代先生のご指導のもと行った今治市での建築見学では今と昔、人と人を結ぶ建築とはどのように作られていくべきなのか、その本質を学び、考えるきっかけとなりました。

最後になりましたが、お忙しい中このような貴重な体験の機会をいただきました「大三島みんなのワイナリー」のスタッフの皆様、今治市役所の担当者様に、この場をお借りし心より御礼申し上げます。  令和7年度 3年 辻上康平