令和六年度 まちづくり演習 大三島訪問

2024年9月7日〜8日、学部3年生の集中講義「まちづくり演習」の一環として、千代研究室のメンバーで瀬戸内海にある愛媛県大三島を訪問しました。
昨年、一昨年と同様、「大三島 みんなのワイナリー」にて栽培から販売を担当されている川田さんご夫妻にお世話になり、ワイン造りに関わる様々な体験をさせていただきました。

ぶどう収穫

ぶどう収穫
海の見える畑

両日の午前にぶどう収穫のお手伝いをさせていただきました。
収穫したのは「シャルドネ」という品種で、強い甘みと香りの良さが特徴のぶどうです。

今回は海が近い畑で、海風や潮の香りを感じながらの収穫作業となりました。
収穫を通じて大三島の気候や自然を感じると同時に、スタッフやボランティアの方々と交流をしながら作業をすることで、大三島の魅力やワイン造りに関わる人々の想いに触れました。

厳しい残暑の中での収穫作業となりましたが、休憩中にいただいたぶどうジュースが身体に染み渡る美味しさでした!

施設見学・インタビュー

1日目の収穫作業後、ワイナリーの醸造所と「みんなの家」(販売所兼事務所)を見学させていただきました。

醸造所 プレス機の紹介中

醸造所では川田佑輔さんに施設案内とインタビューのお時間をいただき、醸造設備やワイン造りと建築との関係性、ワイン造りの難しさや今後の醸造所の展望など、様々なお話を聞かせていただきました。
お話を聞いて、佑輔さんが島の気候風土や島の人々と向き合いながら「島でワインをつくる」ということに重きを置き、試行錯誤しながらワイン造りへ取り組む強い熱量を感じました。

「みんなの家」お土産購入&くつろぎ中

「みんなの家」では川田祥子さんから「みんなの家」とワイン販売についてのお話をお聞きし、ワインを通して島の人々や事業者と繋がりを持ち、島を盛り上げていく川田さんご夫妻の活動を鮮明に感じることができました。
昨年に比べて国内外からのサイクリストや旅行客も増え島の活気が増しているそうで、「参道を基点にもっと大三島を盛り上げていきたい」「参道をのぼりながら楽しめる仕掛けが欲しい」という島の方々の持つ想いも教えていただきました。

大山祇神社参道

その後、「みんなの家」の正面に広がる大山祇神社参道を散策しました。
空き地も目立ちましたがいくつか新しい店もできており、参道を盛り上げたいというが想いがすでに形となって動き始めているように感じられました。
2日目に訪れた「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」にて、「大三島みんなの参道物語」としてこの参道の復活を願ったいくつもの提案が展示されており、人々の想いと建築によってこの参道や島が今後どのように変わっていくのか、注意深く見守っていこうと思いました。

建築見学

2日目の収穫作業の後、島内と今治市の建築を見学しました。
島内では「今治市伊東豊雄建築ミュージアム(スティールハット・シルバーハット)」を見学しました。

「スティールハット」はグレーの鋼板で構成されたいくつかの多面体を組み合わせた外観が印象的な伊東豊雄氏設計の建築です。
内部は多面体を組み合わせ面を切り取ることによって生まれる様々な雰囲気の空間で構成されており、訪問者はそれぞれの空間の雰囲気を感じ取って寝そべったり、のぞき込んだりと、様々な身体的建築体験ができる楽しい空間となっていました。

「スティールハット」 内観

「シルバーハット」は元々伊東豊雄氏の自邸として東京に建てられましたが、大三島に再建され、現在は展示やワークショップなどに使用されています。
菱形に組まれたヴォールト屋根を細い柱とパンチングメタルの壁面パネルで支えることにより軽やかさが生まれ、海辺に建てられたテントのような印象を受けました。

「シルバーハット」 外観

続いて今治市内に向かい、「今治市役所」「今治市民会館」「今治市公会堂」を見学しました。

丹下健三氏は3つの建築をコの字型に配置することで生まれる広場を「市民広場」とし、地域に開放するという構想をしていたとされています。現在その広場は駐車場として使用されていますが、3つの建物が調和し1つの集合体として港からの軸と駅からの軸を受け止めるアイストップになっているように感じられました。

また、当日休館日ながら「今治市公会堂」の内部を特別に見せていただきました。木目のよく表れたコンクリートの打ち方、外壁に現れていた凹凸がそのまま内部にも反映されている点が非常に興味深かったです。ドアノブや家具などの木材の処理もどこかあたたかみを感じさせるものとなっており、見どころの多い建築でした。

港と広場を結ぶ軸線
「今治市役所」(画像左)と「今治市公会堂」(画像右)
「今治市民会館」
「今治市公会堂」内観

おわりに

私自身は2度目の大三島訪問となりましたが、今回の一連の体験を通じて、1年という短いスパンでもわかるほどに変化し続ける島の様子、毎年不確定要素と向き合いながら行うワイン造りの難しさ・奥深さ、「ワイン造り」を介して生まれる様々な繋がりやエネルギーに触れ、改めて「まちづくり」は人の活気と、それを引き出す場の魅力があってこそなされるものだと考えさせられる2日間となりました。
初めての訪問となった3年生にとっても身体を動かしての作業・建築体験の数々で非常に学びの多い2日間になったことと思います。

最後となりましたが、貴重な学びの機会を与えてくださった「大三島 みんなのワイナリー」スタッフの皆様、今治市公会堂の担当者様、1泊2日温かく迎えてくださった「ゲストハウスtonari」の皆様、本当にありがとうございました。この場をお借りして深く御礼申し上げます。

令和6年度 4年 田中佑妃乃